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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

ミツバチぶんぶん

ゆめのばら

 

 祖父の知人の和尚様が始めた、小さな保育園に通いだしてして早3年。
 5歳の私は園では一度も泣いたことがないことがないおてんばちゃんだった。
 田舎の保育園は自然がいっぱい。
 今のように、小学校に上がる前の勉強なんてなくて、木登り、泥団子づくり、虫捕り等々、
 毎日みんな泥だらけになって遊んでた。
 お寺の境内、その広い敷地内は子供の好奇心をくすぐるものにあふれてた。
 広い空き地は、秋にはコオロギが鳴いて、冬には雪合戦が、春にはれんげの花がたくさん咲いてあきることはなかったっけ。

 れんげの花がたくさん咲いたある春の日事件は起きた。
 春のぽかぽか陽気は、私たちをいっそう大胆にさせて、仲間たちは前から思っていたことを行動に移すことにした。
 もちろん先生や親には内緒にして・・・

 私たちは、白い花びらのようなモンシロチョウを、追いかけて、何匹素手で捕まえるかを競いあっていたけれど、それはだんだんやさしく感じるようになりだした。
 みんなの想いは同じで、小学校に入る前に難しいことに挑戦だ!!!
 内容はれんげ畑でぶんぶんと飛び回るミツバチを何匹捕まえるかを競いあうということ。
 みんなの目はキラキラしてて、誰もがいっちば~んを目指した。
 もちろん私も。

 お昼寝の時間が終わり、今日という日を待ってた私たちは、スモッグと帽子を被り空き地に飛び出した。
 のどかな田舎の春の午後、空き地はれんげ色。
 私たちはミツバチを追いかけた。
 れんげの花に止まったところを、そっと両手で包み込む作戦を私は立てた。
 モンシロチョウもこの作戦でうまくいくのだから、ミツバチも大丈夫。
 そんな自信があったような・・・

 目の前の、れんげの花に止まったミツバチを私は両手で包み込んだ。
 誰よりも一番初めに私は捕まえた。っと思った瞬間すごい痛みで手を離した。
 泣き声を聞いて友達は先生を呼んできた。
 みんなミツバチを追いかけるのをやめて、泣きじゃくる私を取り囲んだ。
 みんな、何が起こったのかわからなかった。もちろん、当人さえも。

 「なんでミツバチ捕まえようなんて思ったの?」
 先生が真っ赤になった私の手になにかかけながら、言ったのを憶えてる。
 そんなの常識だと先生は思ったのだろうけれど、私たちにそんな知識はなくて、私が刺されてはじめて、ミツバチはさすんだ・・・と思ったらしい。
 すごい痛みに驚いた私は、もう二度とミツバチには触らないと、心底思った。

 子育て真っ最中の頃、
 自分の子供を同じようなれんげ畑で遊ばせながら、
 「ちょうちょうはいいけど、ミツバチさんは捕まえたらだめよ~」と声をかける私がいた。

 今は、れんげ畑も、ミツバチも姿を見かけなくなった。
 なんだかさみしいなぁ。
 55年前、ミツバチさんへの小さな挑戦・・・無謀だったけど・・・
 でもミツバチさん、経験させていただいたことは、今も忘れていませんよ。
 そしてこれからの世界が、ミツバチさんがもっと自由に飛び回れる世界であることを祈ってます。

 

(完)

 

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